【基礎学習 一級建築士(計画)】ユニバーサルデザインの扉を開く:建築家ロン・メイスが提唱した7原則

一級建築士

ユニバーサルデザイン(Universal Design, UD)は、「可能な限りすべての人々が、特別な設計や調整を必要とせず、使えるようにする製品・環境のデザイン」を指します。この概念を確立し、世界に広めたのが、アメリカの建築家でありデザイナーのロン・メイス(Ronald Mace)です。彼は自らも車椅子を使用するユーザーであり、デザインが人々の生活に与える影響を深く理解していました。

メイス氏が研究者たちとまとめた「ユニバーサルデザインの7原則」は、UDを実践するための具体的なガイドラインとして、建築、工業デザイン、情報通信など、多岐にわたる分野で活用されています。ここでは、その7つの原則を分かりやすく解説します。

原則その1:利用の公平性(Equitable Use)

誰もが不利になることなく、公平に利用できること

特定の人だけが使いにくいと感じたり、特別扱いされていると感じさせたりしないデザインです。

  • 具体例: 誰もが同じように使える自動ドアや段差のない歩道、そして、階段と並行して設置されたスロープやエレベーターなど。利用者が区別されていると感じさせず、自然に利用できる設計が求められます。

原則その2:利用における柔軟性(Flexibility in Use)

利用者の特性や好みに合わせて、利用方法を選べる自由度が高いこと

利き手や能力、利用のペースなど、多様な個人の特性や好みに対応できる柔軟性があるデザインです。

  • 具体例: 右利き・左利きのどちらでも操作しやすい道具、身長や利き腕に応じて複数の高さの手すりがある階段、ユーザーが設定を変更できるインターフェースなど。

原則その3:単純で直感的な利用(Simple and Intuitive Use)

特別な知識や経験がなくても、使い方がすぐにわかること

利用者の経験、知識、言語能力などにかかわらず、直感的に理解できる分かりやすいデザインです。

  • 具体例: 説明書を読まなくても操作がわかる大きなアイコンの家電製品、シャンプーとリンスのボトルにつけられたきざみ状の突起(識別マーク)など。

原則その4:分かりやすい情報(Perceptible Information)

必要な情報が、利用者に分かりやすく確実に伝わること

周囲の状況や利用者の感覚能力にかかわらず、重要な情報が効果的に伝達されるデザインです。

  • 具体例: 視覚・聴覚・触覚など異なる方法で情報を伝えること(例:点字ブロック、音声案内、文字の大きな表示)、コントラストを強くして見やすくすること、大事な情報を強調すること。

原則その5:失敗に対する安全性(Tolerance for Error)

うっかりミスをしても、危険につながらず、簡単に回復できること

誤った操作や意図しない行動が、危険や望ましくない結果につながらないように設計すること。

  • 具体例: 危険な部分に触れにくいようにカバーを設ける、操作ミスがあった場合に警告を出す、間違えてもすぐに元に戻せる「元に戻す」機能など。

原則その6:身体的な負担の軽減(Low Physical Effort)

無理な体勢や、大きな力を必要とせず、楽に使えること

最小限の身体的努力で、効率的かつ快適に利用できるデザインです。

  • 具体例: 少ない力で開閉できるドア(軽い力で押せるプッシュ式のドアノブ)、自然な姿勢で操作できるレバーやボタン、長時間使っても疲れにくいエルゴノミクスに基づいた製品など。

原則その7:接近と利用のための大きさと空間(Size and Space for Approach and Use)

体格や姿勢に関係なく、アクセスしやすい十分な大きさや広さが確保されていること

利用者の体格、姿勢、移動能力にかかわらず、対象に近づき、操作し、利用するのに適切なスペースとサイズが確保されているデザインです。

  • 具体例: 車椅子やベビーカーが回転できる十分な通路幅、座ったままでも立ったままでも操作しやすい高さに設置された操作盤、手が届きやすい位置にあるスイッチなど。

ユニバーサルデザインが目指す社会

ロン・メイス氏が提唱したこれら7原則の核心は、「特別」をなくし、「普通」の範囲を広げることにあります。特定のマイノリティのためだけでなく、すべての人にとって使いやすく、快適な環境や製品を生み出すことで、社会全体の利便性と包摂性を高めるのがユニバーサルデザインの目標です。

問題と解説

問題

公共建築において、誰もが利用しやすいように、ロン・メイス(Ronald Mace)等が提唱したユニバーサルデザインの七つの原則に沿って計画した。

回答

正解

解説

ロン・メイスらが提唱したユニバーサルデザインの7原則は、公共建築において、誰もが利用しやすい環境を計画するための基本的な指針です。この7原則とは、利用の公平性(誰でも公平に利用できること)、利用の柔軟性(多様な利用方法に対応できること)、単純で直感的な利用(直感的に使い方がわかること)、分かりやすい情報(必要な情報が確実に伝わること)、失敗に対する安全性(誤操作が危険につながらないこと)、身体的な負担の軽減(少ない力で楽に使えること)、そして接近と利用のための大きさと空間(体格や姿勢に関わらず利用しやすい空間が確保されていること)です。これらの原則に沿って計画することで、高齢者、子ども、障がい者など、あらゆる人々の能力や状況の違いを超えて、快適かつ安全に利用できる包括的な建築設計が実現されます。

免責事項

本記事は一級建築士試験の学習を補助する目的で作成されており、特定の試験問題の出題を保証するものではありません。学習においては、必ず公式のテキストや過去問題、最新の法規をご確認ください。

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