「コンクリート工事」と聞くと、なんだか専門的で難しそう…そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。特に、コンクリートの「流動性」を表す指標として「スランプ」や「フロー値」といった言葉が出てくると、さらに混乱してしまうかもしれません。
今回は、公共建築工事標準仕様書を例に挙げながら、「普通コンクリートにフロー値は必要なのか?」という疑問に焦点を当てて、わかりやすく解説していきたいと思います。
スランプとフロー値、何が違うの?
まず、コンクリートの流動性を表す代表的な指標であるスランプとフロー値(スランプフロー)について簡単に説明します。
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スランプ:円錐状の型枠にコンクリートを詰め、型枠を引き上げた際にコンクリートが沈下した量(高さ)を測るものです。主に比較的固めのコンクリートの流動性を評価するのに使われます。
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フロー値(スランプフロー):円錐状の型枠にコンクリートを詰め、型枠を引き上げた際にコンクリートが広がる直径を測るものです。より流動性の高いコンクリートの広がり具合を評価するのに適しています。
イメージとしては、スランプは「どれだけ沈むか」、フロー値は「どれだけ広がるか」を見る、といった感じです。
公共建築工事標準仕様書ではどうなっている?
公共建築工事標準仕様書を見ると、コンクリートの種類によって流動性の管理方法が明記されています。
これまでは、普通コンクリートの流動性管理には主にスランプ値が用いられてきました。しかし、流動化コンクリートや高流動コンクリートといった、より流動性の高い特殊なコンクリートには、明確にスランプフローの値が指定されています。
例えば、
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流動化コンクリートのスランプフローは45〜60cm
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高流動コンクリートのスランプフローは55〜65cm
が目安とされています。これは、コンクリートが隅々まで行き渡り、密実な構造物を作るために非常に重要な基準となります。
「普通コンクリート」にもフロー値が必要な時代に?
では、肝心の「普通コンクリートにフロー値は必要なのか?」という疑問ですが、結論から言うと「はい、必要とされる場合があります」です。
以前は普通コンクリートにはスランプ値が一般的でしたが、近年ではJIS(日本産業規格)の改正などもあり、普通コンクリートにおいてもスランプフローで管理されるケースが増えてきています。
この背景には、以下のような理由が挙げられます。
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施工性の向上: 鉄筋が密に配置される場所や、複雑な形状の構造物などでは、従来のスランプ値だけではコンクリートが十分に充填されないことがあります。スランプフローで管理することで、より流動性の高いコンクリートを適切に打設できるようになります。
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材料分離抵抗性の確保: 流動性を高めると、材料分離(砂利や砂が分離してしまうこと)が起きやすくなるリスクがあります。スランプフローで管理される普通コンクリートでは、流動化剤などを適切に使うことで、高い流動性を保ちつつ材料分離が起こりにくく設計されています。
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品質管理の合理化: スランプフローは、スランプに比べてより広い範囲の流動性を評価できるため、品質管理の幅が広がります。
つまり、建物の複雑化や品質向上への要求が高まる中で、普通コンクリートであっても「流れるように行き渡る性能」が求められる場面が増えている、ということです。
まとめ
コンクリートの流動性を表す指標として、従来はスランプが主流だった普通コンクリートでも、近年はスランプフロー(フロー値)による管理が広がっています。特に、公共建築工事においては、その仕様書で流動化コンクリートなどにフロー値が明確に規定されており、これは普通コンクリートにおいても施工上の要求に応じてフロー値が考慮される可能性を示唆しています。
設計図書や特記仕様書で指定されたコンクリートの種類と、それに伴う流動性の管理項目(スランプまたはスランプフロー)を必ず確認することが、適切なコンクリート工事を行う上で非常に重要になります。
コンクリートの進化は私たちの建築物をより安全で丈夫なものにするために、日々進んでいますね!
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