【鉄骨工事】鉄骨製品検査の重要性と検査項目

鉄骨工事

建物の骨組みとなる鉄骨は、その品質が建物の安全性と耐久性を大きく左右します。そのため、製造された鉄骨が設計通りであるか、また必要な強度や品質を満たしているかを厳しくチェックする鉄骨製品検査は非常に重要な工程です。

鉄骨製品検査の目的

鉄骨製品検査の主な目的は以下の通りです。

設計との整合性の確認

製作された鉄骨が、図面や仕様書に示された寸法、形状、材質と一致しているかを確認します。

品質の確保

溶接部の欠陥、材料の損傷、その他製造過程で生じる不具合がないかを検査し、品質を確保します。

安全性の保証

最終的に建物が安全に機能するために、鉄骨が所定の強度と性能を有していることを確認します。

トラブルの未然防止

施工段階や供用開始後に発生しうる問題を未然に防ぎ、手戻りやコスト増加を回避します。

主な検査項目

鉄骨製品検査では、多岐にわたる項目がチェックされます。主要な検査項目をいくつかご紹介します。

寸法検査

長さ、幅、厚み:

鉄骨部材の各部寸法が設計図通りかを確認します。

孔径・孔位置

ボルト孔の径や位置が正確かを確認します。

反り・ねじれ

部材に過度な反りやねじれがないかを確認します。

外観検査:

傷・へこみ

運搬や加工中に生じた傷やへこみがないかを目視で確認します。

溶接部の目視確認

溶接ビードの形状、表面の滑らかさ、アンダーカットやオーバーラップなどの欠陥がないかを確認します。

溶接検査

非破壊検査

溶接部の内部欠陥(ブローホール、融合不良、割れなど)を確認するために、以下の検査が行われます。

・超音波探傷検査(UT): 超音波を利用して内部欠陥を検出します。

・放射線透過検査(RT): 放射線を用いて内部の画像を撮影し、欠陥を特定します。

・磁粉探傷検査(MT): 表面や表面直下のきずを検出します。

・浸透探傷検査(PT): 表面開口欠陥を検出します。

溶接姿勢・手順の確認

適切な溶接姿勢、電流、電圧、速度で溶接が行われたかを確認します。

材料検査(ミルシート確認)

使用されている鋼材が、JIS規格などの所定の品質基準を満たしているか、ミルシート(鋼材検査証明書)によって確認します。化学成分や機械的性質(引張強度、降伏点など)が記載されています。

塗装検査

防錆処理として行われる塗装の膜厚、付着性、均一性が適切であるかを確認します。

検査のタイミングと担当者

鉄骨製品検査は、一般的に工場製作段階の最終工程で行われます。特に重要なのが、塗装工事の前に検査を完了させることです。

なぜなら、一度塗装されてしまうと、鉄骨の表面や溶接部が塗膜で覆われてしまい、以下のような重要な検査ができなくなるためです。

外観検査

傷、へこみ、溶接ビードの形状といった目視で確認すべき欠陥が見えなくなります。

非破壊検査(特に磁粉探傷検査や浸透探傷検査)

これらの検査は表面のきずを検出するために行われるため、塗装があると正確な検査ができません。また、超音波探傷検査も塗膜の厚みや種類によっては影響を受ける場合があります。

寸法検査

細かい寸法や反り・ねじれの確認も、塗装によって視認性が低下する可能性があります。

このように、塗装は鉄骨の表面状態を隠してしまうため、塗装前にすべての主要な検査項目を厳格に実施することが不可欠なのです。

検査は、発注者、元請けゼネコン、または第三者検査機関の担当者が立ち会って行われるのが一般的です。専門的な知識と経験を持つ検査員が、厳格な基準に基づいて検査を実施します。

工場による自主検査の重要性

発注者や元請けによる最終検査が行われる前に、鉄骨を製造する工場では、自社製品の品質を保証するために自主検査(社内検査)を徹底して行っています。この自主検査は、高品質な鉄骨を安定して供給するために非常に重要な役割を果たします。

自主検査の目的とメリット

品質の作り込み

製造工程の各段階で検査を行うことで、不良品が発生するリスクを低減し、品質の作り込みを行います。

手戻りの防止

最終検査で不合格になる前に、工場内で問題を早期に発見し修正することで、手戻りや余計なコスト発生を防ぎます。

品質意識の向上

製造に携わる全員が品質管理の重要性を認識し、高い品質意識を持って作業に取り組むようになります。

信頼の獲得

自主検査を徹底し、高品質な製品を提供し続けることで、顧客からの信頼を獲得し、良好な取引関係を築くことができます。

自主検査で確認される項目

自主検査では、上記で挙げた主な検査項目(寸法、外観、溶接、材料など)を、製造プロセスの各段階で細かくチェックしていきます。例えば、切断後の寸法確認、溶接前後の仮付け状態の確認、本溶接後の非破壊検査(自主検査として実施される場合も多い)など、工程ごとに定められた検査基準に基づいて実施されます。

自主検査で問題が発見された場合は、速やかに原因を究明し、適切な是正措置が講じられます。これにより、最終検査に臨む製品の品質は、より高いレベルで保証されることになります。

まとめ

鉄骨製品検査は、建物の安全性を担保するための最後の砦とも言える重要な工程です。この検査を徹底することで、高品質で安全な建物の提供が可能となります。工場での自主検査が、その品質を支える土台となるのです。

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